各クラスのマシンの解説

1999年6月改訂版
(参考資料:ライディングスポーツ誌、サイクルサウンズ誌、TV大阪・NHKのWGP中継)






GP500クラス
HONDA NSR500

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 114度V型4気筒
最高出力 : 185馬力以上
解説 : 94年以降、5年連続チャンピオンマシン。 92年にエンジンの爆発間隔が変更されて以降、大きな変更はなく、熟成が進んだマシンで、現在のWGP500cc クラスでは、圧倒的な強さを誇る。
ホンダらしく、他のマシンに比べてエンジンの絶対パワーに勝り、常に最高速をマークしている。
98年型ではヤマハYZRと比べてラインの自由度が少ないとドゥーハンは語っていたが、99年型は どう改良されたのだろうか?
2000年型は大幅に変わるとの話もある。


HONDA NSR500V

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 100度V型2気筒
最高出力 : 135馬力以上
解説 : レギュレーション上、2気筒のマシンは4気筒のマシンよりも軽く作れることを活かして、軽量に 依るコーナリングスピードの向上で、4気筒に対抗しようと言うコンセプトのマシン。
2気筒の場合、維持費用が4気筒に比べて安くなると言うメリットもある。
ワークスマシンの他に市販もされており、ワークスマシンと市販車の違いは、サスペンションやキャブレターの材質等、 僅かである模様。
98年型は無鉛化対策に手こずり、思うような成績を残せなかったが、99年型は改良されているようだ。


YAMAHA YZR500

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 2軸クランクシャフト 70度V型4気筒
最高出力 : 180馬力以上
解説 : 98年型でフルモデルチェンジしたマシン。
改善されたとはいえ、やはりトップスピードはNSRに一歩譲るが、コーナーへの進入から脱出に至る過程での アクセルの開け易さと、車体の安定を目標に開発されており、現在のところ、それが見事に結果につながっている。
98年第8戦イギリスで、ホンダの22連勝の記録を止めたマシン。
99年型は、カウルにウイングが装備されるなどの変更が施されている。


SUZUKI RGV−Γ

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 2軸クランクシャフト V型4気筒
最高出力 : 180馬力以上
解説 : 97年に大幅な改良を受けたが、主にライダーの不調に依って思うような成績を残すことが 出来なかった。
98年型では、昨年NSRに乗っていた青木宣篤が乗ることになり、それに合わせた出力特性などを得るためか、 キャブレターをミクニからケイヒンに、サスペンションをショーワに変更したりしている。
99年は今年から移籍したK.ロバーツ(Jr.)が好調で、開幕から2連勝を上げた。


aprilia RSW−2 500

エンジン : 水冷2サイクル ロータリーディスクバルブ吸気 2軸クランクシャフト V型2気筒(推定)
最高出力 : N.A.
解説 : 98年シーズンは開発が中止され参加していなかったが、99年シーズンより原田哲也をライダーに 迎えて復帰した。
97年型と外観上はあまり変わっていないが、完全に設計をやりなおした新型らしい。
2気筒とは思えないほどのトップスピードをマークしており、イタリアGPではV4のワークスΓをストレートで抜き去ったり カタルーニャGPでも、ワークスNSRを押さえきって4位にはいるなど、めざましい活躍を見せている。
ただし、トラブルが多発するのはRSW250と同じようだ。


MODENAS KR3

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 130度(?)V型3気筒
最高出力 : N.A.
解説 : レギュレーションで4気筒より15kg軽い3気筒の利点を活かして、2気筒の持つコーナリングスピードと4気筒の持つエンジンパワーの両立を目指したマシン。
元世界チャンピオンのケニー・ロバーツが中心となって開発したマシン。
98年シーズン途中から新しいエンジンを搭載したマシンを登場させ、かなり戦闘力がアップした。
しかし、資金不足やロバーツのモチベーションの低下などから、今年限りではないかとの話もある。


MuZ 500

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト V型4気筒
最高出力 : 200馬力前後
解説 : 昨年までELF500としてWGPに参戦していたマシン。
ROC設計のフレームに、サイドカー用に開発された、スイスオート製V4エンジンを搭載する。
上下の2気筒ずつが1つのクランクケースを共用すると言う、特殊な構造を持っている。
最高出力は十分だが、多発するエンジンや車体のトラブルによって思うような成績を残せないでいたが、 第6戦カタルーニャGPにおいてP.P.を獲得して周囲を驚かせた。

TSR AC50M

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 100度V型2気筒
最高出力 : 135馬力以上
解説 : NSR500VのエンジンをTSRオリジナルフレームに乗せたマシン。
99年は青木治親のライディングでWGPを戦う。


BSL 500

エンジン : 水冷2サイクル V型3気筒
最高出力 : 不明
解説 : オーストラリア製のニューマシン。
V型3気筒であると言う以外、詳細は不明。
マシンが出来上がったばかりで、今のところ戦闘力は不明。




GP250クラス
aprilia RSW250

エンジン : 水冷2サイクル ロータリーディスクバルブ吸気 2軸クランクシャフト 90度V型2気筒
最高出力 : 98馬力以上
解説 : クラス唯一のロータリーディスクバルブエンジンを搭載し、トップスピードは他のマシンを圧倒 している。
ただ、エンジン特性がややピーキーであると言うことと、構造が複雑なロータリーディスクバルブを使用している為に エンジントラブルが多発すると言う弱点も持つ。
スイングアーム、ホイール、チャンバー等がカーボン製である等、徹底的な軽量化も図られている。
98年シーズンは、14戦中13勝を果たし無敵状態だった。


HONDA NSR250

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 2軸クランクシャフト V型2気筒
最高出力 : N.A.
解説 : 98年にフルモデルチェンジしたホンダのワークスマシン。
2軸クランクシャフトのエンジンとサイドラジエターによって、エンジンの横幅・前後幅の短縮とマスの集中をはかり、 コーナリングスピードの向上を狙ったマシン。
98年はエンジンの最高出力不足と、冷却不足でレース後半に出力が低下するというトラブルに悩まされた。
99年型のマシンは、特徴的だったピポットレスフレームをやめ、ラジエターも一般的な位置に変更されている。


YAMAHA YZR250

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 90度V型2気筒
最高出力 : 90馬力以上
解説 : 95年までTZM250として開発されていたマシンと基本的には同じ。
市販レーサーTZ、市販車TZRと共通のレイアウトのエンジンを搭載し、熟成に熟成を重ねたマシン。
98年の全日本ではNSRと同等以上のトップスピードと、高い加速性能で9戦中8勝を記録した。
99年から中野真矢/オリビエ・ジャックの二人によってWGPに復帰する。


HONDA RS250R

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 75度V型2気筒
最高出力 : 87馬力以上
解説 : ホンダの市販レーサー。1台179万円。
97年までのワークスNSR250のレプリカで、リアのスイングアームは片持ちのプロアーム。
98年型は、カウル形状以外は97年型と変更はあまり無いが、シリンダーの製品精度を向上させている。
WGPに参戦するマシンには「Aキット」と呼ばれるHRC製のスペシャルパーツが組み込まれている。


YAMAHA TZ250

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 90度V型2気筒
最高出力 : 87馬力以上
解説 : ヤマハの市販レーサー。1台182万円。
エンジンの基本レイアウトはワークスYZR、市販車TZRと共通。
98年型は、エンジンの無鉛ガソリン対策が一通り完了し、乗りやすいエンジン特性となっている模様。
WGPを走るのはワークスの手が入ったエンジンを搭載しているマシンだが、そのチューニング箇所はあまり 多くないらしい。
にもかかわらず、今年のWGPでは上位に顔を出すことも珍しくない。


TSR HONDA AC28M

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 75度V型2気筒
最高出力 : 87馬力以上
解説 : テクニカルスポーツが設計したオリジナルマシン。サス・エンジン無しで180万円。
高いコーナリング性能を持つヤマハTZを手本にしたフレームに、ピークパワーに勝るホンダRSのエンジンを 搭載すると言うコンセプトで開発されたマシン。
非常に完成度が高く、WGPでは常にワークスNSRとバトルを繰り広げるほど。
99年型はAC28Mとなる。


ENDURANCE NER250

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 1軸クランクシャフト 75度V型2気筒
最高出力 : 87馬力以上
解説 : 97年までのワークスNSRに非常に近いレイアウトを持った市販マシン。
エンジンはRSのものを使用するが、エンデュランスによるチューニングが施されている。




GP125クラス
aprilia RSR125

エンジン : 水冷2サイクル ロータリーディスクバルブ吸気 単気筒
最高出力 : N.A.
解説 : クラストップの最高速を誇るが、やや加速特性に難があるとの話もある。
圧縮比が高すぎる為に、プラグが破損するというトラブルが97年は頻発した。
97年、98年チャンピオンマシン。
部品の供給が不安定なのと、価格が非常に高価なのが欠点か。


HONDA RS125R

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 単気筒
最高出力 : 43.5馬力以上
解説 : ホンダの市販レーサー。1台87万円。
その歴史は古く、市販パーツも多い。
WGPを走るマシンには通称Aキットと呼ばれるHRCのパーツが組み込まれている。
その優れた加速特性とコーナリング性能で常にトップグループを走っている。


YAMAHA TZ125

エンジン : 水冷2サイクル クランクケースリードバルブ吸気 単気筒
最高出力 : 44馬力以上
解説 : ヤマハの市販レーサー。1台99万8千円。
93年に登場し、それ以来、熟成が重ねられている。
ヤマハ独特の二次旋回の良さで、他のマシンとは違うラインコーナリングできるマシン。
98年型では、キャブレターをケイヒンに、ボア・ストロークをホンダRSと同じに、YPVSを廃止等、大幅な 変更を受け、ホンダRSに近いフィーリングに仕上げられている。
99年シーズン、WGPには参戦はしていない。